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カート・ヴォネガット・ジュニア「タイタンの妖女」

 紆余曲折を経たという程なにもしませんでしたが、結局当初からの第一志望に行けそうです。これで生涯安月給が決定したかと思うと単純に喜べない部分もありますが、金よりやりがいをとってみました。三、四年したら図書館専門の部署に入れてくれると言ってましたしね。しかしここに落ちたら、以前ここの本屋でマニアックなものを注文した履歴が残っていたせいにしようと思ってましたが、その手間が省けてよかったです。

カート・ヴォネガット・ジュニア「タイタンの妖女」
 これも友人から借り物です。冒頭の「たぶん、天にいるだれかさんはおれが気に入っているんじゃないかな」と、ラストの「だがな、天にいるだれかさんはおまえが気にいってるんだよ。」が上手いと思いました。一回目はとことん運の良い男、コンスタントの傲慢にすら思える一言ですが、終わりの方はさんざん苦労した彼へのねぎらいになっています。運命に押し流され、というかトラルファマドール星人という神のような存在にひたすら振り回されて、それでも「人生の目的は、どこのだれがそれを操っているにしろ、手近にいて愛されるのを待っているだれかを愛することだ」という境地にいたったコンスタンスはかっこいいです。
 神様なんかいない。すべては偶然だと証明したがるラムファードも、彼の境遇を考えれば、そう主張したがるのも分かります。きっとコンスタンスと同じく、自分は神に愛されているだろうことを信じて宇宙に飛び立ち、全知全能のような存在になったのに、そうなったこと自体が既に誰かに操作された運命の一部だとしたら、それを認めないために躍起になるでしょう。
 物語の舞台は地球→火星→水星→地球→タイタンと動いていきましたが、地球から火星、地球からタイタンが面白かったです。
by mizuao | 2007-05-19 18:35 | 本(外国人・その他)
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