人気ブログランキング | 話題のタグを見る

菅浩江「永遠の森 博物館惑星」

今日初めて図書館地下四階の電動書架を動かしてみました。レポート書くのに明治時代の雑誌が必要で…。スイッチを押すと書架が動くようになってるんですが、書架の間で本探してる最中、誰かが知らないうちにスイッチを押すんじゃないかとハラハラしてました。本に挟まれて死ぬなら本望とか、まだそこまでは達観してないです。

菅浩江「永遠の森 博物館惑星」
 地球と月の重力がつりあう場所に浮かべられた小惑星上の、博物館アフロディーテを巡る短編集です。といっても主人公は博物館の総合管轄部署で働く学芸員、田代孝弘で固定されてます。毎回博物館内の難題を押し付けられて、愚痴をいいつつも同僚の助けを借りて問題を解決していきます。
 学芸員の多くは、手術の結果膨大なデータを誇るデータベースに直接接続することができ、あいまいな検索要求でも、思い浮かべるだけでかなり適切な検索結果を得ることができます。これがあればレファレンスライブラリアンの苦労がかなり減るのでは、という優れものです。イメージ検索も可能で、これが開発されれば、私は喜んで脳手術を受けることと思います。しかし、そう上手く行く訳でもなく、作中でも主人公が本当の美とは何かを模索しながら、データベースとの適度な距離を測ろうとします。実際のものに触れることでの美を尊ぶ学芸員たちが、なんでもすぐ検索されてきてしまうデータベースに慣れ親しむことで、アイデンティティを失い苦しんでいるのがなんとも切なく感じられました。
by mizuao | 2006-01-26 19:38 | 本(著者サ行)
<< 清水紫琴「こわれ指環」 「澁澤龍彦事典」 >>