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中里十「君が僕を2 私のどこが好き?」

 恒例、クリスマスのクッキー作り。これをツリーに飾りつけてると、そろそろ年末だなーという気がしてきます。我が家の風物詩となってます。まあだいたい毎年この作業を手伝わされる訳ですが、あれですね。星型のクッキーにアイシングをかけてる時に、ほんのちょっと手元が狂いました。いやー、うっかり「龍」の字を書いてしまったじゃないですか。おっかしーな、うふふ。と思ってるうちに、同じことをして慌てて頬を染めるメイド長を幻視しました。

中里十「君が僕を2 私のどこが好き?」
 始め確か「どろぼうの名人」を読んだんですよね。それで一度目は、女の子のちょっぴりエロティックな不思議空間に見せかけて実は内実ドロドロな話なんだか、そう思わせて結局ピュアなんだか、よく分からなくて混乱しました。少なくとも私が今まで読んだことのある作品の持たない空気だった訳です。二度目に読んで、やっとこれは面白いんじゃないかということに気づきました。
 2作目の「いたけな主人」は、1作目でこの著者に慣れたから大丈夫だと思って読んだら、よりすっとんでるではないですか。1作目と世界設定は同じくしているので、千葉が王国として独立しているのは分かってるんですが、それでも登場人物たちにより語られる世界観に幻惑されました。投票でそのへんの一般人から国王決めるとか、その女王がわがままで自分好みの美少女にメイド服着せて、身の回りの世話させつつもといハーレム築くとか、ボディーガードがメイドと亡命(駆け落ち)してロシア行くとか、結局最後は王子様的に戻ってくるとか、オリジナリティーにあふれていたと思います。
 しかし何より登場人物たちがつかめないんですよね。女王さまとか結構ツンデレでSな子してるようにみえて、そんな類型的なものにあてはめると重大な見落としをしているんじゃないかという気がしてきます。

 この「君が僕を」は1巻をそもそも買い逃してるので、恵まれさんの設定がぼんやりとしか分かりません。恵まれさんはお金も持っても触ってもいけなくて、定期すらダメ。みんなのお布施という名の寄付により生活が成り立っていて、恵まれ講と執事さんが面倒を見てる。スーパーのレジの前で、誰かが自分の分の買い物かごの会計をしてくれるのを待ってる姿とか、それが彼女の日常なんでしょうが、主人公以上にハラハラしたと思います。
 恵まれさんも相当謎なんですが、一番意図が読めなかったのが主人公の継母です。子持ちの男と結婚する理由は何と聞かれ、金目当てだと断言できる強さ。主人公と仲良くしたいんだか、色々ちょっかいかけてくるのですが、それが徹底されていないのがまたややこしい一因になってると思います。女の子に向かって、私は女が大嫌いとか言ってはだめでしょう。そもそも主人公を困らせるためとはいえ、「私のどこが好き?」とか初対面の人に聞かれたら、主人公じゃなくても言葉に詰まると思います。それで、相手の耳の形とか思い浮かべる主人公も存分に病んでますけど。いや、この話は一人称だから、実は継母は純粋に主人公と仲良くしたかったけど、どうしていいのか分からなくて葛藤して、それを主人公が曲解したからあんな妙な人間関係になったんでしょうか。もう数回チャレンジしないと、私には読解しきれません。


幻視しました。

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by mizuao | 2009-11-29 00:46 | 本(著者ナ行)

シオドア・スタージョン「一角獣・多角獣」

 NHKはたまにやってくれますよね。奈々さんのブログパーツをここに実装しようかかなり迷いました。日替わりで奈々さんの声が聞けるとか素敵すぎるんですが、どうもエキサイトは動作確認されていないようなので。そして何より、ここに設置するより、ほぼ日参しているあちらのブログで視聴させていただいた方が、見逃す率が減りそうです。

 先日箱根で紅葉狩りついでに、県下最大級の滝を見物してきました。滝の音に掻き消されながら、フォールオブフォールを口笛で頑張りました。周囲に誰もいないからこそできることです。

シオドア・スタージョン「一角獣・多角獣」
 予定通り短編集。こっちの方が、なぜスタージョンがスタージョンたりえるのかというのに納得がいった気がします。確かにいい感じに気違いな話です。
 今後も印象に残りそうなのは、「ビアンカの手」でしょうね。白痴の女性の手に惚れこんだ男性。男性の腕フェチぶりもどん引きですけど、手が意思を持って女性を動かしているかのような描写とか怖すぎます。手が自律しているように見えるのは男性側のフィルターのせいなんじゃないかと知人が言ってましたが、確かにそうかもしれません。なんにしろネチネチした話でした。
 「死ね、名演奏家、死ね」もよかったです。自分の顔にコンプレックスを抱く男が、自分が所属するバンドのまとめ役を殺そうとする話。2時間サスペンスとかにありそうな話だなと思ったりもしましたが、殺したのに死なないまとめ役に怯える男の心情に引き込まれてしまいました。
 あとはシジジイという言葉がいくつかの短編に出てきましたけど、結局著者がこの言葉でどんな概念を示したかったのかがいまいち掴みきれません。クトゥルー神話がなんだかよく知らなかった頃、クトゥルーと聞いて抱いた、なんとなく不気味な感じを思い出します。
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by mizuao | 2009-11-23 20:14 | 本(外国人・その他)

赤松健「魔法先生ネギま! 28」

 このシーズンになると、クリスマスという言葉を耳にする機会も多くなります。なんて素敵な言葉なんでしょう。世間の皆さまがなにかクリスマスという言葉で心温まるイメージを思い浮かべるように、私は黒髪ストレートの少女を思い浮かべて、幸せな気分になれます。ゼフォンとかエウレカも好きですが、BONESの最高傑作はKURAUだと思います。

赤松健「魔法先生ネギま! 28」
 東京で5、6冊本を買い込んだ帰りの電車の中、この中でどれを読むのが一番痛々しくないだろう、と考えたあげくネギまを読むことにしました。これが一番ましだった時点で、ダメさ加減は理解してもらえると思います。
 あいにかわらずネギ君モテモテだね。と、ごく冷静に読み終えるつもりだったんですが、このせつデート回で全てが台無しになりました。もう気持ち悪いぐらいにやにやが止まらない。コンビニのバイトでこのちゃんを養えるか悩む、せっちゃんがかわいすぎます。そういやせっちゃんバカレンジャーだったよね。とか、懐かしんでたら、このちゃんがほっぺにちゅーとかしてくれるじゃありませんか。お姫様だっことか色々あったけど、実は原作で一番過激な描写じゃないか、これ。とか、大興奮です。
 やばいな、自分の顔、と思いつつも読み進めていると、さらに二人の仮契約が始まりそうではないですか。もうあまりの恥ずかしさに耐えきれず、仮契約シーンは読み飛ばしてしまいました。たかがキスぐらいで恥ずかしがる自分のピュアさ加減にびっくりです。家に帰ってからじっくり味わいながら、デート回のみ5、6回読み返しました。これでせっちゃんは、このかの嫁確定ですね。
 テレビ版ネギまの京都編を見て以来、もう数年コミックスを買っているんですが、実に20巻ぐらいこの展開を待ち続けていました。このシーンを見たいがために、28×500円ぐらいを投資してきた訳です。……楽しませてもらった分からいくと、そこまで大きな額でもないですね。となるとやはり、今回の単行本の限定版を、ジャケットのためだけに買ってもよかったかもしれない気がしてきました。
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by mizuao | 2009-11-22 20:01 | 漫画

宇宙建築研究会編「宇宙で暮らす道具学」

 夕飯の焼きナスようにすりおろした生姜ががっつり余ったので、久々にジンジャーミルクティーを作ることにしました。当初は生姜湯の予定だったんですが、最近家に茶葉が結構あるんで、ミルクティー。ここ一年ほど愛飲していたマリアージュのアールグレイがもう大匙4杯分ぐらいしかなかったので、あきらめて他のを物色することにしました。生憎紅茶の知識なんてさっぱりなんで、片っぱしから茶葉の匂いを嗅ぎ、一番あいそうなフォションのなんかのブレンドで調合しました。
 普段は紅茶にミルクとか砂糖とか入れるのは邪道と思ってるんですが、たまに無性にロイヤルミルクティーが飲みたくなります。単にミルクティーだけでも体はあったまりますが、生姜が入ると食道のあたりから体がポカポカ暖かくなります。幸せだ。

宇宙建築研究会編「宇宙で暮らす道具学」
 その筋の研究者たちが、宇宙で使う道具とか家について記事を書いて、それを数十寄せ集めて構成してあります。装丁は取っつきやすそうだったんですが、中読んでると理解できないのがかなりあります。使われてる用語が分からないんですよね。結構専門語があります。
 とは言え、宇宙の椅子とか月面試料採取道具とか、そうなってたのかと感心するものがちらほらと。まだ全然実現してないものについても理論が書かれていて、宇宙への夢が広がりますね。仕訳人がロケットやらスパコンやらを切ったらしいですけど、科学とか教育とか、そういった未来につながるところにこそ、重きを置いて欲しいんですけどね。ほんとに、ロマンを解せない人間はつまらない。
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by mizuao | 2009-11-18 23:02 | 本(外国人・その他)

つばな『第七女子会彷徨』

 なのはの再放送を見ていて、八神一家のラブラブっぷりにあてられました。家族愛も良いですよね。あんなに素直で母性愛に満ち満ちているはやてが、なぜセクハラ狸になってしまうのか。なぞですね。 

つばな『第七女子会彷徨』
 女子高生奇天烈SFとか帯に銘打ってあるので、女子高生が砂漠やら異世界やらに跳ばされ彷徨う話と思うかもしれません。でも「彷徨」するのは主人公たちじゃなくて、読者の側だったんですね。現実と地続きのような近未来(多分)で、唐突にSF的事態が起き、何事かと思います。
 それに対して主人公たちがびびってそれなりのリアクションを取ってくれれば、こっちも落ち着くんですが、彼女たちがあまりに当たり前のように受容してしまうので、こっちもどんな反応をとっていいのか分からなくなります。スルーしてるとかそういう訳ではなく、いったん自分の中に招き入れてから受け流しているというか。同じCOMICリュウのまんがの作り方と空気が似てるかもしれません。読んでる方が、お前らそれでいいのかと突っ込みたくなる感じ。
 主人公二人は、私の中ではニアとまゆ子に変換されました。高木さんはまんまニアですね。頭の中がブラックボックス。行動の予測が全く不能なタイプ。タコ足が生えたメロンパンにかぶりつき、メロンパンが飛んで逃げたことに、「ありえない!タコなのに飛ぶなんてッ!!」。車に撥ねられ息絶えたメロンパンに、「ジュンイチー!!」。……ジュンイチって誰だよ、と突っ込む読み手に、金やんが「うちの父さんと(名前)同じだし!!」とかボケをかぶせてきます。もう読んでる方としては、突っ込むのはそこじゃあない。あのパン屋宇宙人に乗っ取られてるぞ、何とかしろ、と次の展開にハラハラする訳ですが、この訳の分からない話が結局高次の生命体に手を差し伸べられ拒絶したりする話になるので、本当に油断なりません。食べたつもりガムとか、バーチャル天国とか、一つ一つのアイデアはどこかで聞いたようなものなので、この面白さはこのキャラクターと作品の空気にあるんでしょう。人として軸がぶれているというのは、この二人に捧げるべき言葉だと思いました。
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by mizuao | 2009-11-17 23:38 | 漫画

シオドア・スタージョン「夢みる宝石」

 今日の3時のおやつは、焼き立てアップルパイにバニラアイスクリームがのっかったやつでした。アップルパイにバニラは、シフォンにホイップクリームと同じで鉄板ですよね。パイ生地のさくさくっと、バターの優しい香ばしさに、とろりとしたアップルの甘い香り。少し渋めのアールグレイと相まって、至福のひと時でした。一人前にしては多いかなと思いきや、次の瞬間にはなくなっていました。夜のデザートに半分とっておこうと思ったのですが…。まあ夜は夜で冷凍のベルギーワッフルを焼いて、余ったアップルパイの中身をかけてもらいました。ワッフルの格子の中に、レーズンやらリンゴが入り込んで、見た目にもとても可愛らしかったです。もちろん味も上等ですし。私が家を出て自活する気にならない理由のかなりの部分は、この母親による充実した食生活にあると思います。

シオドア・スタージョン「夢みる宝石」
 名前は聞いたことがありつつ、今まで読んだことのなかったスタージョン。なんとなくカルト的なイメージで手が出しにくかったんですが、某所のSSを読んでたらこの名前が出てきたので、手を伸ばしてみました。
 これはSFか?と思いつつ、蟻喰いの主人公がカーニバルに潜り込む不気味さに、すっかり幻惑されていました。カーニバル、見世物小屋、フリークス、小人、双頭……。大学の授業でフリークスの映画を見せられてからというもの、このあたりの言葉を耳にするだけで、ひどく淫靡で頽廃的なものに首を突っ込んでしまっているかのような後ろめたさを感じます。この小説も登場人物にほとんどまともな人間がいないという極端さ。ケイだけですよね、多分。生物学的にも倫理上も人間をやってるのは。
 結局設定が分かってくる中盤のあたりまで何をする小説だか分からないと振り回され、前評判通りの人だなぁという印象を受けました。次は短編集。「一角獣・多角獣」あたりにしようと思います。
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by mizuao | 2009-11-17 00:34 | 本(外国人・その他)

山本弘「地球移動作戦」

 最後の一葉を読んでいて愕然としました。病気になった女の子が窓から見えるツタを見て、あの葉っぱが全部落ちたら私も死ぬの・・・という、かの有名なO・ヘンリーの短編です。もちろん何度か読んだことはありましたが、今までは思ってもみませんでした。この小説って実はGL的な解釈ができたんですね。
 まず芸術を糧とする若い女性二人が、レストランで息が合って同棲という設定が、フィルター持ちにはたまりません。そのうち一人が病気になって、もう片方が介抱というのもベタなパターンですよね。それに、病人に生きる意欲を湧かせる方法の一つとして、気になる男の人のことを考えさせる、というのを医者が推奨するんですが、それに対して友人は、「男の人が……。いいえ、先生、(病人に)そんな者は、いませんわ。ぜったいにありませんは、先生。」と答える訳です。すさまじい全否定。他にも、友人が病人に覆いかぶさってみたり、病人が友人が料理してるところを見たがったり、そっち方向に捻じ曲げる要素に事欠きません。まずいですね。一般的にいい話に分類されているであろう文学作品も、私の頭にかかればこのザマです。誰に対して謝ればいいのか分かりませんが、なんとも申し訳ない気分になりました。
 とりあえず、最後の一葉は、全力でにやにやしながら読む話ではないと思います。

山本弘「地球移動作戦」
 SFマガジンに連載されてたので、ちょくちょくと読んではいました。でもこうして通して読むと、より壮大さを感じます。
 地球に彗星が突っ込むことが分かって、それに対して人類が立ち向かう話。というと単純化できるでしょうか。でも実際突っ込んでくるのは彗星ではなく、ミラー星<シーヴェル>。しかも地球に衝突するのではなく、近くをかするだけです。ただしそれだけでも人類滅亡には十分なレベル。月だけでも潮の満ち引きが起こるわけで、月より巨大な天体が寄ってきたら、とんでもない高潮になる訳です。潮汐力は月の約五万倍という設定ですから、そりゃ陸上の生き物は滅亡しますよね。しかも放射能汚染のオプションつきらしいですし。

 で、第一部は<シーヴェル>発見。たった一つの冴えたやり方とかもそうですが、こういう英雄的な行動は、ベタだと思っていても泣かされます。遠くに行きたくて、未知のものに突っ込んで死ぬ。ロマンがあります。

 第二部は、<シーヴェル>に対してどう対処するか、二つの案の間で世界が揺れ動く話です。一つは主人公側のアース・シフト。これは小惑星を改造し、地球の近くまで移動させ、それで地球を引っ張って動かそうというもの。なおかつ<シーヴェル>接近中は小惑星が輪になって地球の周りをぐるぐる回り、それにより被害を減らせるという利点もあります。もうひとつの案は、人類の記憶を持ったバーチャル上の人格、この話だとACOMを作り、バーチャルにいる彼らに人類の未来を託そうというものです。現実の人類は絶滅すること前提の案なんですが、私は結構このネタが好きです。飛さんとか神林さんとか、この手の話はいくつか読みましたけど、完成度が上がれば、オリジナルとコピーの差ってのは気にならないと思うんですよね。多分。人類としての正しい選択は、やはりこの話のようにアース・シフト側だと思いますが。

 第三部は、いよいよ<シーヴェル>がやってきて、主人公の魅羽が活躍する話です。次々起こるトラブルにめげず、魅羽が戦う展開には胸が熱くなります。最後もうだめだというタイミングで、元カノが助けにくるところとか、何度も繰り返して読んでしまいました。

 イアーゴとか、タキオンによる未来からの災害警告とか、ACOMにプロデューサーさんがいたりとか、織り交ぜられている道具も全て楽しめました。科学的なネタに、未来へのロマン、さまざまな愛情、もろもろの要素を含んでいて、最後まで楽しく読むことができました。
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by mizuao | 2009-11-11 00:01 | 本(著者ヤ行)

恩田陸「不連続の世界」

 先週末は日帰りで高原の避暑地に行ってきました。その日は運よく暖かく、ソフトクリーム複数個食べたり、オープンテラスでのんびりお昼食べたりができる温度でしたが、周囲はもう完全に晩秋でしたね。紅葉が地元では考えられないくらい真っ赤に色づいて、条件が揃えばこんなに深い赤になるんだなと感心しました。ただ夕方になってみると、昼間あまり目立たなかった、くすんだ黄や橙々の樹の方がいい味を出してました。

恩田陸「不連続の世界」
 久々の恩田さん。この人はこのくらいの短編が一番まともに落ちてるかなと思いました。置いてきぼりにならない程度でほどよいです。話としては「悪魔を憐れむ歌」が一番面白かったです。ラジオで流れる死を誘う歌声。結局は人力ボーカロイドだった訳ですが、山の存在で背筋がぞくっとしました。恩田さんのこういう得体のしれないものの話は大好きです。
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by mizuao | 2009-11-03 23:42 | 本(著者ア行)