カテゴリ:本(著者ア行)( 82 )

伊藤遊「鬼の橋」

 研修で、自分のイメージ次第でいかに力の強さが変わるのか、という体験をやりました。自分が地面にはりついているようなイメージを持つと、人に持ち上げられてもなかなか持ち上がらないということ・・・。どこかで聞いた話だよなぁと思い、ちょっと真面目に丹田を落としてみました。
 ペアで組んでたので、もう一人の子が後ろから私のお腹に腕を回して持ち上げようとします。そしてびびったように慌てて手を離しました。当然私はそこで、イメージするだけで全然違うねー、と爽やかに微笑みかけるつもりでした。しかし、相手は手を離した途端に「お腹、硬っ」と予想外なところで驚いているではありませんか。男子とかだったら褒め言葉なんでしょうが、女性な身でそれを言われると、かなり痛々しいものがあります。最近全然筋トレしてないはずなんですが。

伊藤遊「鬼の橋」
 小野篁を主人公とした伝奇もの。さまざまな胡散臭い伝説を持つ篁ならば、こんな少年時代を送っていてもおかしくないなと思います。田村麻呂とかも出てきて、なかなか上手いこと考えてあるなと思いました。
 話自体は自分のミスで最愛の妹を失ってしまった篁が、浮浪児や鬼とかかわることで立ち直っていく姿を描いています。叙情的というかしっとりしてますよね。ぐちぐち悩む篁がいい味出してました。
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by mizuao | 2008-10-12 20:18 | 本(著者ア行)

伊藤計劃「虐殺器官」

 先日の旅行のビデオを見てみたら、ほとんど暑いとお腹すいたとしか言っていませんでした。暑さのあまり脳の表面が熱で変性して、内部の原始的な部位しか働いていなかったためかと思います。あとまったく違う場面で「瓦、かっけー」と言ってました。どうやら私は瓦フェチだったようです。
 旅行の二日目は三宮、姫路を回りました。私が明石焼きはべちょっとしたたこ焼きの出来損ないと思っていたのが気に食わなかったらしい友人が、三宮のおいしい明石焼きの店に連れて行ってくれました。正直食べるまで半信半疑でしたが、食べてみるとふんわりしていて、中はとろとろでとても美味でした。出汁もそのまま飲んで十分おいしい代物です。
 姫路の方は天守閣にたどり着くまでが地獄のようでした。アスファルトの道路で干からびて死んでゆくミミズの気持ちが疑似体験できました。

伊藤計劃「虐殺器官」
 こういう辛気臭い話は大好きです。光学迷彩もどきとか人工筋肉とか、聞き覚えのあるようなものもありましたが、言語学やら文学やら色々なネタが散りばめられている作品は好きです。人工筋肉の養殖の様子とかが具体的に語られているのもよかったですけど。ES細胞とかなんとか話題になってましたが、試験管の中で生物の組織が作られてるのって、なかなか不気味な光景だと思うのです。それに比べれば、生きた動物から使える素材を取り出して加工する方が不気味さが少ないのでしょうか。…どっちもどっちですかね。以前人の体になじむのは豚の体だとかいうのを小耳に挟んだ気がするのですが、本当なのでしょうか。そうすると作られるのは養豚場。
 虐殺の文法というのもなかなか面白かったです。生物の進化において必要とされ誕生したモジュール。ではなく、虐殺の文法が作られ生き残ったことでヒトは進化したことになるんでしょう。甘いものの方が栄養があるから、人間は甘いものを嗜好するようになったというのは聞いたことのある話で、そーなのかーと納得できたものです。それと同じレベルで、増えすぎた村の人口を淘汰するために、大昔に虐殺というモジュールが組み込まれた、というのは興味深い考え方でした。性善説とか性悪説とか倫理というより信仰の問題だよなーと思ってましたが、こうすると実際にありそうな気がしてきます。
 あとは黒幕ジョン・ポールの発想も素敵でした。妻と子が核で奪われた時に自分が浮気していたことを悔い、逆恨みで世界に復讐を誓った男とかだったら、わかりやすかったんですけど、そんなこともなく。自分の愛す守るべき世界(先進国)からテロを無くすため、第三世界のそこらじゅうに内戦の火種をまいて回った訳です。自分たちの犠牲が何の上に立っているか考えもしない、愛すべき無垢な国民。彼らを守るために、第三世界の住民には第三世界の中で残虐性を発揮してもらう。割り切った考え方ですよね。それに反対して先進国に自分たちの罪を考えるきっかけを与えようとした主人公も、かなり最悪の形でそれを実行します。最後どう落とすのか気になってましたが、私としては納得のいく終わり方でした。
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by mizuao | 2008-07-27 20:38 | 本(著者ア行)

アサウラ「ベン・トー 2」

 携帯に貼った蝶のシールに傷が入ってたので、あきらめてカッターでごりごり剥がしてみました。ビニールか何かでできた固めのシールだったので、羽が細かくバラバラに割れて、まるで本物の蝶の標本を壊してしまったかのようで気分が悪くなりました。
 小さい頃から自分で不思議なぐらい虫や鳥の死骸が苦手です。つい先日もいつも通る道にトカゲ(もしくはカナヘビかその手のもの)の死骸を見つけ、裏返った腹の白さが目に焼き付いて、それから毎日遠回りです。私の経験上、6月7月あたりは何かと死骸が多い気がします。車に轢かれてつぶれたカタツムリの殻、それから飛び出すぐちゃっとした身のコンボは、下手なB級ホラーよりよっぽど鳥肌が立ちますです。死んだセミがガンガン転がっている8月9月もホラーな季節ですね。自分の進行方向に見かけるたびに反射的に手をぎゅっと握り、他のルートを模索します。中学の時、死んだセミを靴の先で転がしていた友人がいましたが、まさか彼女もそんなことが原因でいまだに私に畏怖されているとは思わないでしょう。
 これだけ死骸が苦手苦手言いながら、肉や魚は大好きですし、しらすの踊り食いとかしたこともあります。つまり道端で死んでるものに対して極端に弱い訳です。多分小学校の二年の時に公園で見た、食い荒らされた鳩の死骸がトラウマになっているのだとは思います。もういい年ですし、いい加減乗り越えなければと思うのですが、どうすれば怖くなくなるんでしょうね。

アサウラ「ベン・トー 2」
 待ちに待ったアサウラさんの4作目です。今回も前作と同じく、シリアスギャグアクションだったかそんな路線を行くようです。ギャグ部分について言えば、前回よりがっと下ネタのレベルが上がったような気がします。これは確実に新キャラのあやめのせいですね。エロ要員でゆとりっぽい辺が、なんとなく茶色くなる前の美希のようです。主人公の従姉妹で幼馴染という、いかにもな役どころなのですが、ほんと色々と笑わせてもらいました。下ネタ以外の部分では、サラダデイズのくだりと石岡君ネタですね。あとは今回まさかの出番なし?と心配した白梅様も、後半大暴走で満足しました。
 今後も作者の秀逸な食べ物描写が、・・・作者のぎりぎりな生活が透けて見えて、生暖かい目で見守りたくなる素敵な食べ物描写が読めることを願ってます。あと『白粉花の日常』と『筋肉刑事』も是非読みたいです。
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by mizuao | 2008-07-05 20:43 | 本(著者ア行)

円城塔「Self-Reference ENGINE」

 まだ今週二日しか働いてないのにえらく疲れがたまってます。だるいです。いつもは一段抜かしで駆け上がる階段も、今日はとぼとぼと一段ずつ上がってました。

円城塔「Self-Reference ENGINE」
 頭が働かない状態で読んでたので、余計に訳が分からなくて楽しめました。三章目ぐらいまでは必死で考えてたんですが、その後は雰囲気を楽しむことにしました。イベントをきっかけにして時間軸がごっちゃになった世界(全体レベル)で、無数のパラレルワールドの知性体たちが、世界を自分のいる世界に統合させようと日々計算合戦を繰り返しています。それが零戦スタイルで争われている章はともかく、三位一体計算とかもう何言ってるかさっぱりわかりません。ケンタウリ星人もややこしくなるから出てくんなと思いました。
 単品単品ではなんとなく分かるのですが、全体通して結局なんだったのか考えたら頭が痛くなりました。なんとなくボルヘスを思い出します。と思ってググってみたら、結構これ読んでボルヘスを思い起こした方がおられたようです。やっぱりバベルの図書館のネタとか入ってましたもんね。それにA to Z理論とかのセンスも似たようなものを感じます。
 
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by mizuao | 2008-05-14 19:20 | 本(著者ア行)

アサウラ「ベン・トー サバの味噌煮290円」

 屋久島に行くのに色々と装備を揃えてます。レイン・コートとかリュックとかその他もろもろに防水スプレーをふっかけて。しかしガイドブックを読んでいるとスニーカーではだめだと書いてあります。踵が厚くて足首の固定できるトレッキングシューズが望ましいと・・・。でもトレッキング・シューズと同程度のごつさを誇る私のスニーカー。山行くときとかもだいたいこれで行ってるので、まあこれでいいかなと思ってしまいます。履きなれない靴でマメ作るよりゃ幾分かましでしょう。

アサウラ「ベン・トー サバの味噌煮290円」
 なんとも脱力を誘うタイトル。前作は2作ともかなりシリアスだったアサウラさんですが、編集者がちょっと違った芸風のものを書かせてみようとしたらしく、苦労なさったようです。そもそも事前に男主人公と買う気が失せたのですが、あとがきからそれも編集者の陰謀であったことが分かり購入しました。正直アサウラさんが書いてるんじゃなかったら、こんな見るからにバカ小説っぽいのは買わないよなーと思いながら・・・。
 しかし読んでみたら面白いです。とても半額弁当を奪い合ってるとは思えない緊張感ただようアクションシーン。前作からガンアクションが上手い人という印象だったのですが、銃なしでもいけるのが良く分かりました。おばちゃんと茶髪がショッピングカート押し合っているところなんて、本来なら引くようなネタなのに、この流れの中でやられるとかっこいいです。豚のグレートアップバージョンが大猪なのも上手いです。たかが半額弁当を糧に成長していく主人公の姿も素晴らしい。ばからしい。
 そしてアサウラさんの食べ物の描写がまたいいんですよね。半額弁当とかスーパーのおにぎりとか、本来ならそこまで語るべきところがないであろうものが、とてもおいしそうに思えます。”透明ビニールというセクシャルな服を羽織って艶やかな黒下着を見せつけてくれる大和撫子。その下の純白のシャリに守られた具材は梅、紀州の赤い文字が僕を誘ってくる。あえて紀伊ではなく紀州なのが実にエロイ・・・ではなく、ニクイ。”たかが50円のおにぎりにこの気合の入れ方。作者の食生活が透けて見えるようです。
 半額弁当を勝ち取り損ねた敗者(主に主人公)の夕食、どんべえ。そのどんべえがまたおいしそうなんですよね。それで影響を受けやすい私の今日の晩飯はどんべえです。どんべえに商店街で買ったコロッケ一つ。主人公の夕食を再現してみました。でも栄養に一抹の不安を感じたので、昼に茹でといたほうれん草をトッピング・・・。量的にも不安を感じたので、焼き餅を二つほど放り込みます。・・・もはや敗者の食事ではない豪華さに美味さ。氷結な方にどやしつけられそうです。
 あとは主人公含め登場人物たちも素敵です。クールビューティーな先輩に、どSな委員長。腐女子で漢好きな戦友。ありがちな設定ではありますが、主人公のそれに対する反応が絶妙でなんとも言えません。石岡君ネタも面白いし。バニラとか紅は話的に一巻完結でしょうが、これはまだまだ話的に続けられそうね気がします。半額弁当を壮絶に争ってる時点で出落ちな気もしますが。とにかく続編が出るんだったら、白粉と白梅の関係をもっと掘り下げてくれというのが私の希望でしょうか。
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by mizuao | 2008-03-06 22:29 | 本(著者ア行)

今田絵里香「「少女」の社会史」

 WA5をクリアして思いましたが、ループネタはずるいです。うっかりアブリルをアナスタシアの衣装のままにしていたので、TFシステムを止めに走るアブリルが英雄アナスタシアとかぶって涙腺が緩みまくりました。あとExファイルのキャラクター図鑑にやるせないにゃ状態もしっかり入っているのが心憎いです。

今田絵里香「「少女」の社会史」
 勉強になりました。女子が「少年」から切り離され、「少女」として確立されていく過程の話が面白かったです。学歴が立身出世につながらない女子であるからこそ、芸術を謳歌する女学生が生まれたというのに納得しました。通わせる親の方としても一種のステータスのようなものだから、教養を身につけることを許したんですね。
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by mizuao | 2008-01-29 23:07 | 本(著者ア行)

稲垣恭子「女学校と女学生」

 母に頼まれたのでデザート替わりにカクテルを作りました。母がドライ・ジンを発掘してきたので、それベースでレシピを探してみました。結果アルコールが弱い父と兄には、とびっきり薄いジン・トニックを。母には希望のギムレットを。自分にはセブンス・ヘブンを・・・と思ったんですが、地元を探してもマラスキーノが見つからなかったので、家にあったキルシュワッサーで泣く泣く代用です。おつまみはオリーブにブリーにチェダーチーズ、さらにプラムにマカデミアンナッツ。チェダーチーズが値段の割りにおいしくって掘り出し物でした。

稲垣恭子「女学校と女学生」
 これを読んでいて、女学校というのは今の女子高以上に特殊な存在だったんだなと感じました。今と違って中産階級の女子しか通えなかった学校。そこに通っている一部の女子が「少女」と呼ばれ、少女雑誌を読み、同じ価値観を共有していたと考えると、不思議なものがあります。
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by mizuao | 2008-01-27 22:41 | 本(著者ア行)

恩田陸「中庭の出来事」

 昨日は地元の図書館に職場訪問に行ってきました。本のいっぱいあるところに行くと無条件に嬉しくなるのですが、やはり書庫は格別です。電動書架がびっしり入ってたり天井まで本が並んでいたりするのを見るとわくわくします。一般フロアと違って照明も落としてあるのでダンジョンっぽさが増しています。やっぱ書庫でひたすら出納する人とかやっていたいです。ならアルバイトになれという話ですが。

恩田陸「中庭の出来事」
 久々の恩田さん。劇中劇の劇中劇というか多重の入れ子になっていて、最後訳が分からなくなりました。結局どれが一番下の階層なんでしょうか。『告白』ですかねぇ。それを書いたのが神谷で、彼も『中庭の出来事』という劇の登場人物の一人であると。さらにそれの他におじさんたちが話している世界と、おじさんとおばさんが話している世界があって、それが最後の辺で融合してるっぽいのですが、もう完全に混乱しました。
 あと最後に初出見てびっくりしたのがこれが携帯小説だったということです。すごく細かく章が分かれているので携帯小説と言われて納得する部分もありますが、これがバラバラに配信されてきたらいよいよ混乱するのではないかと。まあでもそこを敢えてやってみるのが恩田さんなんだろうと思いました。
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by mizuao | 2008-01-19 19:53 | 本(著者ア行)

荻尾望都「左手のパズル」

 明日から母の実家です。母が成田山まで着物で初詣に行くと張り切っているので、私まで巻き込まれないか不安でしょうがありません。

荻尾望都「左手のパズル」
 絵本です。ただし文が萩尾さんんでイラストが別の人なんで、なにか変な感じがします。耽美な絵柄なんで、話そのものとは違和感がありませんが。話は24年組の一言で説明できそうです。
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by mizuao | 2007-12-29 22:36 | 本(著者ア行)

アサウラ「黄色い花の紅」

 二冊目。

アサウラ「黄色い花の紅」
 かっこいいお姉さまがやくざの組長の娘を守る話だと思ってました。実際第一部は奈美恵さんという私以上の女尊男卑論者が、追い詰められた紅花を救出し、降りかかる火の粉を払いのけます。「女に拳を振り上げ、銃を突きつける男は死ねばいい。一人として逃がしはしない。全員ぶっ殺してやる。」名言ですよね。私もいつか使ってみたいところですが、せめて奈美恵さんクラスの強さがないと、言ってもかっこがつきません。
 奈美恵さんに母を見、信じて頼り切る紅花と、そんな彼女を「仕事ではなく、建前ではなく、自らの想いに従い」守りたいと望む奈美恵。この二人の信頼関係はすごいものです。この状態のまま話が続いてもそれはそれでありだと思いますが、ここで終わらないのがよかったです。奈美恵さんの途中リタイアからの紅花の成長に感動しました。
 この話では日本でも一般人の銃の所持が合法化され、もちろんライセンスの取得や納税などの手間はあるものの銃の所持に対する敷居がぐっと低くなっています。紅花もそんな環境の中、保護されている工藤商会(武装した何でも屋)で鍛えられていきます。とは言っても、全くど素人だった紅花が止まった状態での静止的への射撃を覚えるだけですが。この辺の過程で親切に基礎知識の解説があり嬉しかったです。この作者も深見さんと同類らしく、銃関連が激しいです。
 自分のことは自分で守ると決意した紅花は、この後さして時間のないまま実戦に投入されます。もちろん紅花は工藤商会の味方に守られ、何発も撃つものもあまり役に立ちません。それでも逃げずに最後まで戦い抜いた彼女は本当に強くなったと思います。最後の父親との一幕も見せられました。少女が成長する物語として、とても楽しめました。
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by mizuao | 2007-11-16 14:38 | 本(著者ア行)