伊藤計劃「虐殺器官」

 先日の旅行のビデオを見てみたら、ほとんど暑いとお腹すいたとしか言っていませんでした。暑さのあまり脳の表面が熱で変性して、内部の原始的な部位しか働いていなかったためかと思います。あとまったく違う場面で「瓦、かっけー」と言ってました。どうやら私は瓦フェチだったようです。
 旅行の二日目は三宮、姫路を回りました。私が明石焼きはべちょっとしたたこ焼きの出来損ないと思っていたのが気に食わなかったらしい友人が、三宮のおいしい明石焼きの店に連れて行ってくれました。正直食べるまで半信半疑でしたが、食べてみるとふんわりしていて、中はとろとろでとても美味でした。出汁もそのまま飲んで十分おいしい代物です。
 姫路の方は天守閣にたどり着くまでが地獄のようでした。アスファルトの道路で干からびて死んでゆくミミズの気持ちが疑似体験できました。

伊藤計劃「虐殺器官」
 こういう辛気臭い話は大好きです。光学迷彩もどきとか人工筋肉とか、聞き覚えのあるようなものもありましたが、言語学やら文学やら色々なネタが散りばめられている作品は好きです。人工筋肉の養殖の様子とかが具体的に語られているのもよかったですけど。ES細胞とかなんとか話題になってましたが、試験管の中で生物の組織が作られてるのって、なかなか不気味な光景だと思うのです。それに比べれば、生きた動物から使える素材を取り出して加工する方が不気味さが少ないのでしょうか。…どっちもどっちですかね。以前人の体になじむのは豚の体だとかいうのを小耳に挟んだ気がするのですが、本当なのでしょうか。そうすると作られるのは養豚場。
 虐殺の文法というのもなかなか面白かったです。生物の進化において必要とされ誕生したモジュール。ではなく、虐殺の文法が作られ生き残ったことでヒトは進化したことになるんでしょう。甘いものの方が栄養があるから、人間は甘いものを嗜好するようになったというのは聞いたことのある話で、そーなのかーと納得できたものです。それと同じレベルで、増えすぎた村の人口を淘汰するために、大昔に虐殺というモジュールが組み込まれた、というのは興味深い考え方でした。性善説とか性悪説とか倫理というより信仰の問題だよなーと思ってましたが、こうすると実際にありそうな気がしてきます。
 あとは黒幕ジョン・ポールの発想も素敵でした。妻と子が核で奪われた時に自分が浮気していたことを悔い、逆恨みで世界に復讐を誓った男とかだったら、わかりやすかったんですけど、そんなこともなく。自分の愛す守るべき世界(先進国)からテロを無くすため、第三世界のそこらじゅうに内戦の火種をまいて回った訳です。自分たちの犠牲が何の上に立っているか考えもしない、愛すべき無垢な国民。彼らを守るために、第三世界の住民には第三世界の中で残虐性を発揮してもらう。割り切った考え方ですよね。それに反対して先進国に自分たちの罪を考えるきっかけを与えようとした主人公も、かなり最悪の形でそれを実行します。最後どう落とすのか気になってましたが、私としては納得のいく終わり方でした。
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by mizuao | 2008-07-27 20:38 | 本(著者ア行)
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