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早川書房「SFマガジン 04,2008」

 やっとの休みで一息ついてます。七連続勤務しただけでこれだけ疲れるのに、毎日残業で休みなしで一月働き続けたら病めますよね。世間の頑張る人たちを尊敬します。

早川書房「SFマガジン 04,2008」
 予約しといたら職場の机の上にさりげなく置かれてました。・・・これはうっかり下手な本は取り寄せできません。お嬢さまシリーズが返却されてきて、手に持って即自分が借りるかどうか悩んでも我慢です。いつのまにか復刊になってたんですね。鎌倉市はきっと買ってないだろうなぁ。
 今回は「ベストSF2007」上位作家の競作ということ。しばらくSFマガジン読んでなかったので情けないことに知らない作家さんの名前がかなりあります。とりあえずティプトリー・ジュニアの幻の短編というのが載っていて得をした気分です。環境破壊に対して警鐘を鳴らしている短編ですが、あとがきによれば書かれたのは1972年ということで、さすがです。こういった社会的なテーマが込められているのがよいところなんですね。地味すぎるのがなんなんですけれども。
 あと菅浩江さんの新連載で[流浪の民」。現代(近未来?)の女子大生が美容に悪戦苦闘する話と、狩猟民族が定住化するに従い化粧を身に付けていく話が平行しています。見ものなのはこの二つがどう絡んでいくかという点と、菅さんの膨大な知識と緻密な下調べに基づくであろう化粧に関する薀蓄でしょうか。
 全く名前を知らなかった伊藤計劃さんの中篇も面白かったです。何度も違う人の脳に上書きされていく、英国スパイの記憶。自分の脳を弄くる研究者やドナー達が殺される事件を探るうちに、隠されていた事実に気づきます。自分の記憶のない時(決して意識がない時ではない)に人を殺しちゃっているあたりがちょっとジキルとハイドっぽいなと思いました。何度も甦り似たようなスパイ経験を繰り返しているうちに、経験で体が動くようになってしまう。その結果意識がいらなくなり、意識がダウンロードされず最後には消滅してしまうというのは恐ろしいです。最後が私の意識に安らぎあれ、となってるのがまた上手いです。神林さんのあなたの魂に・・・が思い起こされます。結局人間の肉体と意識のどこに魂がやどってるんでしょうかね。
by mizuao | 2008-05-03 22:41 | 本(外国人・その他)
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