新城カズマ「サマー/タイム/トラベラー 2」

 先週「時間と人間」だか「人間と時間」だかいう本の一章分だけ読んでました。それによると、過去現在未来の関係を示すのに、因果論という考え方と目的論という考え方があるそうです。因果論の方は多分通常うちらが考えてるであろう、過去がそうだったから現在がこうある、現在こうするから未来がああなる、というような考え方です。それに対して目的論では、未来にこうなって欲しいから現在こうする、現在がこうなのは過去に未来がそうあることを望んだからという考え方です。多分。
 特に人間の経済活動は目的論なもので、サマータイムトラベラーの中にでてきた例ですが、これから先価値が上がりそうな株を皆が買うからその株の値段が上がり、さびれていく地方の土地は誰も買わないから余計に価値が下がり町はさびれていきます。つまり、人間というのは未来に縛られて生きてる訳です。

新城カズマ「サマー/タイム/トラベラー 2」
 時間跳躍少女なんて幻想的な存在ですが、すごい理論がつけられていて、実際にいてもおかしくないような気にさせられます。心底面白い作品だと思いました。悠有が未来に跳ぶのは、宇宙が宇宙であり続け、全体の統一性を求めるために必要なことだから・・・だそうです。詳しく書くと、どんどん本来の正しい意味からかけ離れていくと思うので、理論の説明は避けますが、すごい発想だと思います。私が知ってる限りタイムトラベルものでは、タイムトラベルしたせいで宇宙の調和が崩れていくか、結局宇宙に何の影響も及ぼせないかのどっちかですが、宇宙の調和を保つためにタイムトラベラーが出現するというのは逆転の発想だと思います。
 あと、主筋とは関係ない部分の多種多様の小ねたもすごい面白かったです。アエリズムとかライ麦畑とか。アエリズムの方は、ネットのせいで人類は確率的に滅亡する説とか、人間の自殺を防ぐためには人工的に来世や前世を作り出すべきだとか、面白いと思うどころかひどく納得してしまいました。私もアエリズムの信奉者らしいです。
 ライ麦畑の方は、主人公たちが暇つぶしにそれぞれの解釈にしたがって、ライ麦畑の原書を訳していくのですが、彼らの解釈の仕方が笑えすぎます。ホールデンが幽霊だったり野球少年だったり私立探偵だったり。しかもタイトルが「ムギバタ球場の正捕手くん」だし。アエリズムの響子なんかはホールデンの一人称が「おいら」ですよ?サリンジャーの愛読者の全てを、この部分だけで敵に回せそうです。私自身はホールデンに対して虫唾がはしるとか思ったクチなんで胸がスッとしましたが。
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by mizuao | 2006-04-27 21:37 | 本(著者サ行)
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