大原まり子「ハイブリッド・チャイルド」

 雨の降った後の匂いが夏に近づいてきた気がします。花粉症のせいで3月4月の気候を楽しむことができないので、毎年結構この季節は好きです。この頃に咲いて、かなり強烈でマニキュアのような甘い香りを発する花が近くの公園に植わってるんですが、毎年何の花か調べようと思っては忘れてます。

大原まり子「ハイブリッド・チャイルド」
 人類vs機械帝国が宇宙において争いを繰り広げる中、人類は神の託宣により、核融合によるエネルギー源、機械の骨格、生物の殻を持つ兵器、サンプルB群を作り出します。圧倒的不利にあった人類は、サンプルB群のおかげで勢力を巻き返すことができますが、サンプルB群の内の一体、サンプルBⅢ号が自我を持って軍から逃走します。この話は基本Ⅲ号の逃避行を追って物語が進んでいきます。
 三号とかヨナとかシバとか、そうとう悲惨な運命をたどった彼らも印象深いですが、人類の危機に誕生した軍神の存在が面白いです。軍神はある人間の女の腹から八百歳の老人の姿で生まれ、そこから八百年かけて若返って行きます。それだけならそんなにややこしくないですが、「かれ」は八百年間の時間の中に遍く存在し、全ての事象を見通すことができます。全知全能にも見える「かれ」ですが、実際は広範囲に広がったが故に一つの空間・時代においては存在が希薄であり、その時間軸に自分を留めて置くだけでもかなりのエネルギーを消耗します。また彼自身は自分の存在に疑問を持ち、自分と同じようなものの存在を恋焦がれます。この話の中では、神と人間との違いがひどくあいまいに感じられます。
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by mizuao | 2006-04-23 11:53 | 本(著者ア行)
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