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京極夏彦「嗤う伊右衛門」

録画しといた前回のエウレカを見て、やっと金枝篇の意味がわかりました。大きな秘密を知ってそうな人たちが意味ありげに金枝篇を持っていたのでなにかと思いましたが、王殺しの象徴だったんですね。自分の父王が衰えてきたら、父王を殺し、その大地のエネルギーを受け継ぐとかそんな話だったか。

京極夏彦「嗤う伊右衛門」
 半分ぐらい読むまでこれが四谷怪談だと気付きませんでした。お岩さんと言うと大抵多くの人が顔のただれた恨みがましい幽霊を想像すると思います。しかし実際四谷怪談を読めばお岩さんに罪はなく、お岩さんに呪い殺されても文句の言えない人たちがいたことが分かりますが、この嗤う伊右衛門では、よりお岩さんの正当性が語られている気がします。人にだまされても、ただただ夫伊右衛門の幸せを願い続け、決して誰も恨もうとしないお岩の様子には心打たれます。だからお岩と伊右衛門をだまし引き離した面々が狂い死に、最後二人が結ばれるという結末は素敵でした。
 心正しく性根が優しい女性が虐げられ限界に達すると、ぶち切れて恐ろしい化生に変わるというのは、雨月物語にもあった思います。これは江戸時代の人が好きなテーマだったんですかね。
by mizuao | 2006-02-23 10:53 | 本(著者カ行)
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