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加納朋子「いちばん初めにあった海」

昨日録画してた「女王蜂」見ました。八つ墓村とか犬神家に比べりゃおどろおどろしさが減りますが、全て栗山千秋のミステリアスなホラー顔(失礼)でカバーされてます。六番目の小夜子の時とかも、彼女の持つ雰囲気と眼力が美人転校生役にはまってましたが、今度のもぴったりだと思いました。今後ぜひ雪女とかもやって欲しいです。

加納朋子「いちばん初めにあった海」
ねえ―。
いっとう初めに降ってきた、雨の話をしようか。
それとも、いちばん最初に地球にあった、
海の、話を……。
 から始まる物語です。加納さんのこういうフレーズというか言い回しが大好きです。透き通った文章というのはこういうものを言うのかなと。癒しを求めるなら、私には加納さんの作品が一番です。
 一部と二部というか「いちばん初めにあった海」と「化石の樹」の二編に分かれてますが、この二つは切り離して読むことが出来ません。二人の女性が登場人物となっていますが、一番目の方は身近な人の死を見すぎて殻に閉じこもった女性が、その友人の手助けで救われる話。二番目の方は人を殺したと思い悩むその友人の方が救われる話です。両方とも読まないと二人とも救われない訳です。個人的には一番目の話は少し不幸で凝り固まりすぎていたので、二番目の話の方がさわやかで心地よかったです。一番目の女性の方は自分の屈折を隠そうしていたために、大きな不幸にあった時に乗り越えられなかったという感じですが、二番目の女性は自分が周囲になじめないことを認めることで、既に自分が保てるようになっています。二番目の女性の方が強くて好きです。
by mizuao | 2006-01-09 14:16 | 本(著者カ行)
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